世界は広いが、町中華はもっと深い

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第一話 おばあちゃん




僕はカーボベルデ。


大西洋の真ん中で、今日も風に吹かれています。


朝の港は静かでした。


海は青というより銀色で、水平線の上には薄い雲が浮かんでいます。


漁師たちが船の準備をする音だけが、波の音に混ざって聞こえていました。


その朝、一人のおばあちゃんがやって来ました。


小さな帽子をかぶり、少し大きめの旅行かばんを引きながら。


港に着くと、彼女はどこへも行きませんでした。


お土産屋にも。


展望台にも。


観光地にも。


ただ港のベンチに腰掛けて、海を見ていました。


十分。


三十分。


一時間。


僕は少し心配になりました。


退屈していないだろうか、と。


すると彼女は潮風に白い髪を揺らしながら、小さく笑いました。


「何もしないのって、案外難しいのね。」


その声は独り言のようでした。


聞かれたいわけでもなく、隠したいわけでもない。


僕は少しだけ風を弱めました。


彼女が海を見やすいように。


夕方になると、空はゆっくりと桃色に染まりました。


海の表面には金色の光が揺れています。


おばあちゃんは立ち上がり、沈む夕日を見ながら言いました。


「若い頃に来たかったと思ったけど、今だから見える景色もあるのね。」


僕はその言葉を胸のどこかにしまいました。


島にも、忘れたくない言葉があるのです。



第二話 若い青年




それから数か月後。


今度は若い青年がやって来ました。


港に降り立つなり、彼はスマートフォンを取り出しました。


画面を見ては首をかしげています。


「有名スポットは......」


検索。


「おすすめランキングは......」


検索。


さらに検索。


でも僕は少し困りました。


実は僕、有名な観光ランキングにはあまり載らないんです。


青年は昼頃には少し疲れた顔になっていました。


そして、あてもなく坂道を歩き始めました。


白い壁の家々。


窓辺の花。


軒先で昼寝をする猫。


洗濯物を揺らす海風。


そのどれもが特別ではありません。


だけど、その日の夕方。


港近くの小さな食堂で青年は地元の人たちに囲まれていました。


誰かが魚を焼き。


誰かがギターを弾き。


誰かが歌い始める。


言葉はほとんど通じていません。


でも不思議と笑い声は絶えませんでした。


海の向こうへ沈む夕日が窓を赤く染める頃。


青年はぽつりと言いました。


「なんかさ。」


そして照れくさそうに笑います。


「こういうのでいいんだな。」


その言葉に誰も説明を求めませんでした。


僕も求めませんでした。


良い言葉は、ときどき説明しないほうが美しいものです。



第三話 少女




ある夏の日。


一人の少女がやって来ました。


彼女は港へ着くなり、海ばかり見ていました。


大人たちが景色を撮影している横で、ずっと水平線を見ています。


まるで何かを探しているみたいに。


夕方。


彼女は船着き場に座り、小さな声で言いました。


「海の向こうには何があるの?」


もちろん、その言葉は僕に向けられたものではありません。


でも僕には聞こえました。


僕はずっと海を見てきた島です。


海の向こうで夢を見つけた人を知っています。


夢を諦めた人も知っています。


帰ってきた人も。


帰れなかった人も。


だから簡単には答えられませんでした。


その代わり。


空を見せました。


夕焼けが少しずつ広がり、海と空の境界が消えていく時間です。


世界がどこまでも続いているように見える景色。


少女は息をのみました。


そして目を輝かせながら言います。


「私、いつか行ってみたい。」


僕は安心しました。


旅立ちたいと思う人がいる限り。


世界はまだ若い。


そう思えたのです。



第四話 失恋した女性




雨上がりの朝でした。


珍しく空は曇っていて、海も少しだけ灰色でした。


その日にやって来た女性は、とても静かでした。


誰とも話しません。


写真も撮りません。


海を見ても笑いません。


ただ歩いていました。


何かから逃げるように。


何かを置いていくように。


僕は理由を聞きませんでした。


島には時々そういう人が来ます。


言葉にできない荷物を抱えた人たちです。


夕方。


彼女は崖の上にある小さな道へやって来ました。


下では波が岩に砕けています。


風は強く、髪を何度も揺らしました。


彼女は海に向かって言いました。


「終わっちゃったな。」


波だけが返事をします。


ざあん。


ざあん。


まるで


「知ってるよ」


と言うように。


しばらくして、彼女は笑いました。


泣きながら。


笑いながら。


とても不思議な顔でした。


空を見ると、雲の切れ間から夕日が差し込んでいます。


海の一部だけが金色に輝いていました。


彼女はその光を見つめながら呟きます。


「まだ終わりじゃないか。」


誰に言ったのかは分かりません。


自分かもしれないし。


海かもしれない。


あるいは明日の自分だったのかもしれません。


翌朝。


彼女は少し軽い足取りで港へ向かいました。


船が離れていくとき、一度だけ振り返ります。


僕はいつものように何も言いませんでした。


ただ少しだけ優しい風を送りました。


それが、この島なりの見送り方だからです。



僕はカーボベルデ。


大西洋に浮かぶ小さな島国です。


人生を振り返る人も来ます。


人生を探している人も来ます。


人生に傷ついた人も来ます。


でも帰る頃には、みんな少しだけ歩く速度が遅くなっています。


たぶん海が。


たぶん風が。


たぶんここで流れる時間そのものが。


「そんなに急がなくても大丈夫だよ」


と伝えているからでしょう。


そして僕は今日も、次の旅人を待っています。



おはようございます。mine(ミネ・マイン)です。


今回は、2026年ワールドカップでダークホースと呼ばれ、大きな爪痕を残した国「カーボベルデ」を基調に書いてみました。


みなさん、ワールドカップはご覧になりましたか?


私はトーナメントに入ってからほとんどの試合を観ていますが、特にカーボベルデ対アルゼンチンの試合には心を打たれました。


ワールドカップ初出場のカーボベルデ VS 前回王者アルゼンチン。


多くは語りません。


本当に素晴らしい試合でした。



さて、最近の私は町中華にハマっています。


特に好きなお店の特徴は、次の3点です。


・お店の風通しがあまり良くなさそうなこと


・床が少し油で滑りやすいこと


・メニューにオムライスがあること


まず、「お店の風通しがあまり良くなさそう」という点について。


少し表現しづらいのですが、簡単に言うと地元の常連さんに長く愛されている雰囲気のお店です。


次に、「床が少し滑りやすいこと」。


これは結構大事です。


できれば、その気になれば2回転くらいできそうな滑りやすさがあると嬉しいです。


そして最後は、オムライス。


私はオムライスが大好きです。


「町中華でオムライス?」と思われるかもしれませんが、行ったときは高確率で注文します。


オムライスはお店によって本当に個性が出ます。


ご飯がケチャップライスなのか、それともチャーハンなのか。


卵に少し焦げ目を付けるのか、それとも鮮やかな黄色を保つのか。


そんなことを考えているだけで、お腹がすいてきます。



ここまでブログを読んでいただきありがとうございました。


最後に恒例の、お勧め音楽をご紹介させていただきます。



さて、今月の一曲のお時間です。


8月に入り、いよいよ夏本番。


暑さには少々参ってしまいますが、


この季節だからこそ聴きたくなる曲があります。




きっと、一度は耳にしたことがある名曲。


どこか懐かしく、どこか切なく、


夏の夕暮れや夜風によく似合う一曲です。




昔から知っている方も、


初めて聴く方も、


この機会にぜひお楽しみください。













サザンオールスターズで


「いとしのエリー」